AIがどんどん便利になるなかで、弊社でもChatGPTやClaudeといった生成AIを利用して業務を行うことも増えてきました。
AIはとても便利なものの、倫理観のなさや学習元の不明瞭さ、セキュリティ的な問題など、ビジネス利用時の懸念がとても多いツールでもあります(詳細はひしもちさんが上げてくださっているこちらの記事をご覧ください
「生成AIを安全に活用するために知っておきたいリスクと対策」)。
また、なにかを作ってもらったり調べてもらったりする際に、なんとなく聞くと自社やお取引のあるクライアントさまの文脈とかけ離れた内容が返ってきてしまい、何度もやりとりするんなら自分でやったほうが早かった…といった、こともしばしば起こります。
このように、AIにやってほしくないこと・守ってほしいことであったり、AIに事前に知っておいてもらいたいこと、というのはある程度決まっており、そういった前提を共有した上でやりとりを行うことで、人間もAIもスムーズに業務を行えるのではないか?と考え、生成AIに守ってもらうためのガイドラインを作ることにしました。
いつもわたしたちが業務を行う上で気をつけていることをAIに共有し、自社の特色やクライアントさまの傾向なども伝えておくことで、ストレンジブレインのスタッフと近い指標で生成を行い、バイブコーディング時のやりとりを簡単にしたり、AIから人間へ作業をバトンタッチしたあとの手直しを減らすことを目指しました。
…ということで、結構自社のいろんな情報が含まれているのでガイドラインの本文部分は公開はしないのですが、せっかくなのでどのようなガイドラインを、どのようにして作ったかについてまとめます。
どういったものができあがったのか
現在、会社としてはClaudeやClaude Codeを契約しているのですが、まだまだAI戦争は加熱しており、何が生き残るかがわからない状況なので、まずはClaudeとChatGPT両方で使えるもの、という仕様で作ることにしました。
| ガイドライン置き場 | Github |
|---|---|
| 利用可能なAI | チャット型のAI(Claude・ChatGPT)/コーディングエージェント(Claude Code・Codex) ※Github連携ができるAIであれば使えるので、今後各サービスの提供内容によってはもっと増える可能性があります |
| 生成対象のスコープ | Webツール/画像/テキスト生成/WordPressの開発補助 |
| ガイドライン本文の言語 | 日本語 |
| 使い方 | Githubに連携したAIから、生成依頼をする際に、ガイドラインのリポジトリを参照して内容を読んでもらってから生成してもらう |
一口に言うと、ストレンジブレインでの共通認識的なもの+生成AIにやってほしくないことやまさかこれをやってはないよね?的なことの事前チェック項目をまるっとGithub上に置いておいて、前提の共有などの手間を省く!という感じです。
内容的にはガイドラインというよりは、野生の生成AIをストレンジブレイン社内に招き入れるにあたっての事前情報とルールブックの抱き合わせみたいな感じのものです。
ガイドラインのルールや会社の前提条件ポン置きだと、いろいろ読み込むのにあまりにも労力がかかってしまうため、構成もひと工夫しました。必要なファイルだけを読んでもらうイメージですが、人間側も楽ができるようなファイルを用意しました。
- コピペ用 入口ファイル
-
AIに最初に投げる用のプロンプトをAIチャット/コーディングエージェント別に用意。
- 人間が書く用 依頼テンプレート
-
依頼内容を伝える際に使うテンプレート。生成物別に用意してあり、どのガイドラインルールを参照するかが予め用意されているので、あとは必要箇所を記入するだけになっています。
- AIが読む用 ガイドラインルール集
-
ガイドラインの本編部分。
- 全体共通ルール
- 生成物別ルール
- 補助ルール
- AIが読む用 補助資料
-
- 自社情報
ガイドライン自体の言語は日本語で作ることにしました。
英語で書いてあるほうがより正確に、かつ使用するクレジットも少なくなるという傾向はあるのですが、今、具体的にどういった内容をAIに守ってもらうようにお願いしているのか?というのをわたしたちがすぐわかることの方がメリットが大きいと判断し、今のところは日本語での記述のみにしています。
長期的に運用してみて、ある程度固まったルールや使用頻度の高いルールから順にAI参照用の英語版を作るような運用を検討しています。
ガイドラインルールにはセキュリティ的に問題があることをしないでね!などの他にも、表現に関してのルールも制定しました。
倫理的に問題がある表現やブラックハットなやり方をクライアントのみなさんに提案するようなことをしていないので(当たり前ですが…)、そういったものがそもそも生成されないようにしています。

どのようにしてガイドラインを作ったのか
これらのルールは、社員みんなでそれぞれの得意分野を持ち回るかたちで手分けをして制定しました。
ガイドライン作ろう!の言い出しっぺがわたしなので、一応中心となって作業していますが、内容はほとんど同じ量ぐらいずつ反映されているはずです(みなさん、ご協力ありがとうございました!)。
具体的にどのようにして作っていったのかについてまとめます。
まず、このガイドラインの基本仕様を考えます。
具体的にどういった時に使うのか?自社で使うならどういったAIに対応したらいいか、などを決めるために、仕様や構造を考えるのと平行して社長の岡田さんへのヒアリングなども行いました。
会社として、AIを使っていこうと思う!という方針は昨年末くらいから岡田さんより社員みんなへ共有されていたのですが、AIに対する心象や利用状況というのは実はまだまだひとそれぞれなところがあります。
全体で喋るところでお願いするよりも、個別にお話し、会社としてAIを利用する上で不安に思っていることも共有してもらうことで、AIにやってもらいたくないことの幅も決めました。
社員各々のスキルの蒸留ではなく、AIを道具として使う時にこうであってほしいな、という人間とAIが協業する際の要望事項のようなかたちで取りまとめていきました。
ストレンジブレインは全員が自走できる人間で構成された会社です。なんとなくのやりとりでも各々が自走してベストを尽くす会社なので、各々が業務上で気にかけていることをあまり言語化してきていなかった…!ということに気づきました。作っているのはAI向けのガイドラインですが、自分たちの制作時にも決まっていると楽なこと、気をつけるべき内容の共有みたいなことが出来た気がします。
ヒアリング内容を一気に反映!とすると大変なことになるので、段階を踏んで反映をしていきました。
- 伺った内容を各スコープごとに分類分け
- AIチャット上でガイドラインのどの部分に追加すべきか?言い回しはこれで聞いてくれそうか?入口ファイルやテンプレート内での指定項目の変更有無を検討
- AIチャットにコーディングエージェントへのリレーション用のmdファイルを出力してもらい、コーディングエージェントへmdファイルを渡してリレーション
- コーディングエージェント上で反映
- 1~4を繰り返す
コーディングエージェントで反映する際に、Claude CodeとCodexに度々入れ替わってもらい、それぞれのAIの仕様にあったものになっているかなどを確認してもらいながら進めました。
壁打ち担当のチャットベースのAIと反映担当のコーディングエージェントとで役割を分けたのは、あいだで作るリレーション用のmdファイルが壁打ちによる反映予定内容のサマリー化するので、ガイドラインとして定めるべき内容の確認が逆に簡単になる、という利点があったためです。
ガイドライン自体が肥大化するにつれ、最終的に反映されたもので内容を確認することが大変になっていきます。
リレーション用のmdファイルを挟むことで、これから反映する内容の粒度で物事を考えて判断することができるので人間側の作業負担をずいぶん減らすことができました。
盛り込みたい内容のおおかたの反映ができて一段落、のタイミングで生成テストを行いました。
ガイドラインを使用する場合と使用しない場合とで差がちゃんと出てくれるか?ガイドラインを使用した結果意図しない部分でおかしなことになっていないかの確認は重要です。
また、テンプレートを使った依頼文の書き方として分かりづらい箇所がないかの確認も行いました。人間がちゃんと依頼文を作れなかったら元も子もないので…。
ガイドラインを作るにあたって気をつけたこと・工夫したこと
- 反映単位でレジュメを残し、経緯がわかるようにした
-
さきに説明した依頼時のリレーション用のmdファイル以外に、反映単位でADRを残すようにしてガイドラインルールの変更理由を追えるようにしました。
どういった意図で追加されたルールなのかがわかることで、干渉するようなルールを作ろうとしてしまった際の理解の助けになります。
- 各ガイドラインルールが長くなりすぎないようにした
-
元々Claude CodeはCLAUDE.mdが長過ぎると適切に約束事を守ってくれない、などの傾向があるのもあり、各ガイドラインルールをどれだけ長くても100行以内に収めるようにしました。
- ガイドラインルールの項目の選定をするにあたり、AIまかせにするやり方は採用しなかった
-
よくあるAI向けのガイドラインから使えそうなところを引っ張ってきて!とAIにお願いする、ということはしませんでした。
AIが人間と協業を行う前提で使うためのガイドライン、ということを前提として作った手前、人間がAIにこうしてほしいと考えていることの言語化に注力をしました。
人間がAIにこうしてほしいと考えていることの言語化、というやり方をしたことで、AIを積極的に活用したいと考えている人にとってもAIの利活用を不安視する人にとっても、こうしてほしい/こうしないでほしいを盛り込めるのでどちらの要望もうまく反映できたものになっているように思います。
- 外部リソースも活用できるようにした
-
デフォルトのデザインシステムとしてmelta UIを採用するものとし、デザインに関する細かい規定をガイドライン上では独自に行わないことにしました。利用できる外部のリソースを頼ることで、手早く開発を進めることができました。
今後の展望
- ガイドラインのSkills化Custom GPT化
-
利用できる環境に幅を設けた結果、使い方がやや面倒くさい感じになってしまいました。Skills化したりCustom GPT化したりしてもう少し手軽に使えるようにしたいです。
ただ、AI向けのガイドラインがプライベートリポジトリになっているので、使いたいAIがプライベートリポジトリもちゃんと読める環境になる必要があります。今はまだ少しだけ様子見が必要そうですね…!
- AIを利用する側のガイドラインの策定
-
今回はAIに守ってほしいガイドラインルールを作りましたが、AIを使うわたしたちの側も気をつけなければならないこともたくさんあります。
利用者向けのガイドラインルールが定まることで、AI向けのガイドライン内に「利用者向けのガイドラインではこうなっていたけど大丈夫?」と確認するような機能をつけてより安全に利用できるようにすることもできます。
- ガイドラインルールの反映対象の拡大
-
現状、ガイドラインルールの適応範囲のスコープが日々の制作業務の範囲と比較すると狭い範囲のことに限定されている状態です。
より幅広く活用するためには、ガイドラインルールの反映対象を広げる必要があります。
Web制作というAIが代替しやすい業界において、AIによって仕事を奪われるという話はだいぶ前から言われ続けていたことでした。
実際にAIがわたしたちの業務を代替しつつある昨今において重要なことは、代替可能になった業務をまるまるAIに丸投げすることではなく、いかにAIとの協業体制を組み、わたしたちがこれまでに培ったスキルとかけ合わせて価値や創造性を広げられるかです。
そのためにはAIと協業する方法を模索し、なにをわかってもらいなにを規制すべきかを(知識量では劣っても現実社会を乗り越えていく経験としては)人間であり自社についてAIより詳しい先輩であるわたしたちが教えてあげるほかありません。
社内での本格的なAIの利活用はまだまだはじまったばかりですが、今回の取り組みに留まらず継続的によりよいAI活用方法の模索を行い、ひとつ上の価値提供へと繋げていけたらと考えています。


